
近年、IoT機器の普及やDX推進の加速により、製造業においてもワイヤレス給電への関心が高まっています。ケーブル接続の手間をなくし、効率的な電力供給を可能にするこの技術は、工場の自動化や新しい製品開発において大きな可能性を秘めています。しかし、その一方で、人体への影響や電磁波のリスクについて懸念を抱える経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ワイヤレス給電のメリット・デメリットから安全な活用方法まで、詳しく解説していきます。
1. ワイヤレス給電のメリット・デメリットと現状の課題
製造業において、ケーブル配線の煩雑さや断線リスクは生産性向上の課題です。これを解決する技術がワイヤレス給電であり、工場内の自動化やロボット活用、新製品開発の可能性を広げています。ワイヤレス給電とは何か、その詳細な仕組みや種類(電磁誘導方式、磁界共鳴方式など)については、こちらの記事をご覧ください。
▼ワイヤレス給電とは何か?活用事例とメリット・デメリットを解説
https://wireless-power.nabtesco.com/media/column/a8
ワイヤレス給電の主なメリット
ワイヤレス給電の導入により、ケーブルが不要になることで作業効率が大幅に向上し、断線や感電のリスクも低減されます。これは特に、移動する機器への給電や、粉塵・水分の多い環境での安全性確保にも役立ちます。
また、ケーブルの摩耗や損傷による交換・修理が不要となるため、長期的な運用コストの削減が期待できます。さらに、ケーブル配線を考慮しない自由なレイアウトが可能になり、省スペース化にもつながります。加えて、常時稼働が必要なIoTデバイスなどへの連続給電が可能となることで、スマートファクトリーの実現や、新しいビジネスモデルの創出が促進されます。
ワイヤレス給電の主なデメリットと課題
ワイヤレス給電にはデメリットも存在します。まず、有線給電に比べて電力損失が大きく、送電距離が離れるほど効率が低下する傾向があります。また、導入初期費用が高価になる傾向も挙げられます。
標準化と技術的制約も課題です。複数の方式や周波数帯が存在するため、規格の統一が進んでいない点が挙げられます。長距離での高効率伝送や、複数機器への同時給電技術はまだ発展途上にあります。
さらに、電磁波の影響への懸念も存在します。人体への影響や、他の電子機器への干渉リスクが挙げられるほか 、給電エリア内に金属などの異物が存在した場合の過熱リスクや、多様な環境変動への対応も課題となっています。
2. ワイヤレス給電の主なデメリットと課題
ワイヤレス給電の導入を検討する上で、電磁波の人体への影響は重要な懸念点です。 具体的にどのようなリスクがあるのか、知っておきましょう。
電磁波の安全性に関する基本的な考え方と基準
電磁波は自然界にも広く存在しますが、ワイヤレス給電で用いられる周波数帯は、X線のような電離放射線とは異なり、主に熱作用や誘導電流による作用が主です。
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの国際機関や各国の政府機関は、電磁波の人体への影響について継続的に研究し、安全な利用のためのガイドラインや規制値を定めています。ワイヤレス給電システムは、これらの厳格な安全性基準をクリアするように設計・製造されており、日本の電波法にも準拠しています。
電磁波の強度は発生源からの距離が離れるにつれて急速に減衰するため、通常の使用条件下では、ワイヤレス給電からの電磁波が人体へ与える影響は極めて小さいと考えられています。
製造業におけるワイヤレス給電導入時の電磁波対策
製造業の現場でワイヤレス給電を導入する際は、電磁波に関する懸念を払拭し、安全な運用を実現するための対策が不可欠です。
そのためには、国際的な安全性基準や国内規制に準拠した製品を選定し、信頼できるサプライヤーから導入することが重要となります。また、人の立ち入りが多い場所や精密機器の近くへの設置は慎重に行い、必要に応じて遮蔽対策を検討するなど、設置場所を十分に考慮する必要があるでしょう。
導入後も、システムが正常に動作しているか、電磁波の漏洩がないかなどを定期的に点検・対処することで、安全性を維持できます。さらに、ワイヤレス給電の安全性や正しい使い方、異常時の対応について従業員に周知し、教育を徹底することで、安心して利用できる環境が整えられます。必要に応じて、電磁波に関する専門家からアドバイスを受けることも有効な手段です。
3. 安全なワイヤレス給電の活用方法と未来
ワイヤレス給電は、製造業に革新をもたらす可能性を秘めた未来の技術です。安全性を確保しながらそのメリットを最大限に活かすことで、産業の変革に貢献しています。
安全な利用環境の構築と製造業の未来
ワイヤレス給電の安全な利用には、技術的な側面だけでなく運用面での工夫も重要です。規格準拠製品の採用、適切な設置計画、異常時に自動停止するフェイルセーフ機能の搭載、定期的な安全点検、そして従業員教育の徹底が求められます。
ワイヤレス給電は、真のスマートファクトリー実現に貢献します。電源ケーブルからの解放により、工場内のレイアウト変更やロボットの自由な移動が可能になり、柔軟で効率的な生産ラインを構築できます。
これにより、リアルタイムデータ活用が進み、生産性や品質のさらなる向上につながります。AGVや自動搬送ロボットへの自動給電は、人手不足が深刻な企業にとって、労働生産性向上を促進する重要な要素です。電力供給の制約がなくなることで、これまで困難だった場所や用途でのIoTデバイス活用が進み、新たなモニタリングシステムや予知保全サービスなど、付加価値の高い製品やサービスが生まれる可能性を秘めています。
環境への負荷低減に貢献するワイヤレス給電
ワイヤレス給電は、環境への負荷低減にも貢献します。ケーブル製造に必要な資源の使用量や廃棄物の削減、メンテナンスに伴う環境負荷の低減が期待できます。また将来的には、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーとの連携により、持続可能な社会の実現に貢献する可能性も秘めています。
4. まとめ
ワイヤレス給電の電磁波によって、人体への影響や安全性が懸念されるデメリットがありますが、適切な知識と対策を講じれば、そのリスクは最小限に抑えられます。 ケーブルからの解放による生産性向上、安全性向上、そして新しいビジネスモデルの創出といったメリットが、未来の製造業を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。
特に人手不足の企業にとって、ワイヤレス給電による自動化・省人化は継続的な成長の鍵となります。ワイヤレス給電の課題を把握した上で、安全に導入・活用することは、企業の競争力を高める力となります。先を見据えた経営を実現するうえで、ワイヤレス給電は欠かせない技術です。
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