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鉛蓄電池とは?長持ちする充電方法や処分方法、仕組みなどを解説

鉛蓄電池とは?長持ちする充電方法や処分方法、仕組みなどを解説

製造業において、安定した電力供給は生産性向上と品質維持の要です。特に鉛蓄電池は、その信頼性とコストパフォーマンスから多くの企業で採用されています。しかし、充電方法や保守管理を適切に行わなければ、期待する性能を発揮できません。

本記事では、鉛蓄電池の基本的な仕組みから、長寿命化のための充電方法、適切な処分方法まで解説します。さらに、次世代の電力供給ソリューションとして注目されるワイヤレス給電技術についても触れ、企業の電力インフラ最適化に向けた示唆を提供いたします。

 

鉛蓄電池とは?基本的な仕組みと特徴

鉛蓄電池は、その名の通り「鉛」を主材料とした二次電池の一種です。約160年前にフランスのガストン・プランテによって発明されて以来、信頼性とコストパフォーマンスの高さから、自動車のスターターバッテリーをはじめ、産業用電源、非常用電源、再生可能エネルギーの蓄電システムなど、幅広い分野で利用され続けています。

充電と放電を繰り返すことができる二次電池であり、化学反応によって電気エネルギーを貯蔵・放出する仕組みを持っています。その安定した性能と比較的安価な製造コストが、長年にわたり多くの産業を支える基盤となってきました。

鉛蓄電池の構造と動作原理

鉛蓄電池の基本的な構造は、主に「正極板」「負極板」「電解液」「セパレーター」から構成されています。正極板には二酸化鉛(PbO₂)、負極板には鉛(Pb)が使用され、これらが希硫酸を主成分とする電解液に浸されています。セパレーターは正極と負極が直接接触してショートするのを防ぐ役割を果たします。

放電時には、正極の二酸化鉛と負極の鉛が電解液中の硫酸と反応し、両極板に硫酸鉛(PbSO₄)が生成されます。この化学反応の過程で電子が放出され、外部回路に電気が供給されます。

一方、充電時には外部から電気エネルギーを供給することで、放電時とは逆の化学反応が起こり、硫酸鉛が再び二酸化鉛と鉛に戻り、電気エネルギーが蓄えられます。この一連の可逆的な化学反応が、鉛蓄電池の充放電の原理です。

鉛蓄電池の種類と用途

鉛蓄電池には、電解液の状態や構造によっていくつかの種類があります。主なものとして、電解液が液体として存在する「液式(開放型・密閉型)」と、電解液がゲル状またはガラスマットに吸収されている「制御弁式(VRLA:Valve Regulated Lead Acid)鉛蓄電池」があります。

液式鉛蓄電池

自動車のスターターバッテリーに多く見られる開放型と、メンテナンスフリー化された密閉型があります。電解液の補充が必要な場合があります。

制御弁式鉛蓄電池(VRLA)

電解液をガラスマットに吸収させたAGM(Absorbent Glass Mat)タイプや、電解液をゲル状にしたGEL(ゲル)タイプがあります。ガス発生を抑制し、メンテナンスフリーで横置きも可能なため、UPS(無停電電源装置)や通信機器、太陽光発電の蓄電システム、フォークリフトなどの産業用電源として広く利用されています。

これらの特性から、鉛蓄電池は自動車、バイク、船舶の始動用電源、産業機械(フォークリフト、無人搬送車AGVなど)の動力源、工場やデータセンターの非常用電源・バックアップ電源、通信基地局の電源、再生可能エネルギー(太陽光、風力)の蓄電システムなど、非常に多岐にわたる用途で活躍しています。

製造業での主な活用シーン

製造業において、鉛蓄電池は様々な形で重要な役割を担っています。その信頼性とコストメリットから、多くの工場や生産ラインで不可欠な存在となっています。

工場内搬送機器の動力源

フォークリフトや無人搬送車(AGV)といった工場内の物流を支える機器の動力源として、鉛蓄電池は長年にわたり利用されています。特に大容量を必要とする用途でその強みを発揮します。

非常用電源・バックアップ電源(UPS)

生産ラインやデータセンターなど、電力供給の途絶が許されない場所では、停電時に瞬時に電力を供給するUPS(無停電電源装置)の主要な蓄電池として鉛蓄電池が採用されています。これにより、システムのダウンタイムを防ぎ、生産活動の継続性を確保します。

生産設備の安定稼働

精密な制御を要する生産設備や、突発的な電圧変動に弱い機器の電源安定化のために、鉛蓄電池を組み込んだ電源システムが利用されることがあります。

通信設備の電源

工場内の通信システムやIoTデバイスの電源、あるいはそれらのバックアップ電源としても鉛蓄電池は活用されています。

これらの活用シーンは、鉛蓄電池が製造業の安定稼働と効率化に大きく貢献していることを示しています。

鉛蓄電池のメリット・デメリット

コストパフォーマンスと信頼性のメリット

鉛蓄電池は、その長い歴史と成熟した技術基盤により、他の蓄電池と比較して初期導入コストが非常に低いという大きなメリットがあります。

また、その構造がシンプルであることから、高い信頼性と堅牢性を誇ります。過酷な環境下や幅広い温度範囲でも安定した性能を発揮し、非常用電源、無停電電源装置(UPS)、自動車用バッテリーなど、高い信頼性が求められる用途で長年にわたり使用されてきた実績があります。急な停電時やシステムのバックアップなど、いざという時の安定稼働に貢献します。

重量・環境負荷などのデメリット

鉛蓄電池のデメリットとしては、まずエネルギー密度が低い点が挙げられます。これは、同じ容量の電力を貯蔵するのに、リチウムイオン電池などに比べてはるかに大きな体積と重量を必要とすることを意味します。このため、スペースや重量に制約のある用途(例:電気自動車の主電源)には不向きとされています。

また、主成分である「鉛」は有害物質であり、不適切な廃棄は環境汚染につながる可能性があります。しかし、日本では鉛蓄電池のリサイクルシステムが確立されており、使用済みバッテリーの90%以上が回収・再利用されています。適切な処分方法に従うことで、環境負荷を最小限に抑えることが可能です。

さらに、他の先進的な蓄電池と比較してサイクル寿命が短い傾向にあります。頻繁な充放電を繰り返す用途では、交換頻度が高くなる可能性があります。

他の蓄電池との比較

鉛蓄電池は、主にリチウムイオン電池と比較されることが多いです。コスト面では、鉛蓄電池が圧倒的に優位であり、初期投資を抑えたい場合に適しています。しかし、エネルギー密度、サイクル寿命、自己放電率においては、リチウムイオン電池が優れています。

具体的には、リチウムイオン電池は軽量・コンパクトでありながら大容量の電力を供給できるため、電気自動車やスマートフォン、ノートパソコンなどのモバイル機器に広く採用されています。

一方、鉛蓄電池は、その堅牢性とコストの低さから、非常用電源、フォークリフト、太陽光発電の定置用蓄電池、通信基地局のバックアップ電源など、主に定置型や比較的重量が許容される用途でその強みを発揮します。

安全性に関しては、鉛蓄電池は構造が安定しており、熱暴走などのリスクが低いとされています。リチウムイオン電池も安全性は向上していますが、過充電や過放電、外部からの衝撃などにより発熱・発火のリスクがあるため、より高度なバッテリー管理システム(BMS)が不可欠です。

鉛蓄電池を長持ちさせる正しい充電方法

鉛蓄電池の寿命を最大限に延ばすためには、適切な充電方法が不可欠です。過充電や過放電は電池の劣化を早める主な原因となるため、正しい知識に基づいた管理が求められます。

適切な充電電圧と電流の設定

鉛蓄電池の充電には、適切な電圧と電流を設定することが重要です。一般的に、定電圧定電流(CCCV)充電方式が推奨されます。これは、充電初期に一定の電流で充電し、電圧が所定の値に達したらその電圧を維持しながら電流を絞っていく方法です。

鉛蓄電池の1セルあたりの充電電圧は、一般的に2.30V~2.45V程度が推奨されます。例えば、12Vのバッテリー(6セル)であれば、合計で13.8V~14.7Vの範囲で充電します。フロート充電(満充電状態を維持するための充電)では、やや低い電圧(12Vバッテリーで約13.5V~13.8V)が適用されます。

充電電流は、バッテリー容量のC/10(10時間率容量の10分の1)からC/5(5分の1)程度が一般的です。例えば、100Ahのバッテリーであれば、10Aから20A程度の電流で充電します。過大な電流での充電は、バッテリーにストレスを与え、寿命を縮める可能性があります。

液式鉛蓄電池の場合、充電の進行度合いは電解液の比重を測定することでも確認できます。満充電時には比重が最大値(通常1.280程度)に達します。

過充電・過放電を防ぐ管理方法

鉛蓄電池の寿命を縮める最大の要因の一つが、過充電と過放電です。これらを防ぐための管理が非常に重要になります。

過充電の防止

過充電とは、バッテリーが満充電になった後も充電を続ける状態を指します。これにより、電解液の電気分解が進み、水が水素ガスと酸素ガスに分解されて減少します(特に液式バッテリー)。また、グリッド(極板の骨格)の腐食を促進し、バッテリーの内部抵抗を増加させ、最終的に寿命を大幅に短縮させます。

過放電の防止

過放電とは、バッテリーが許容範囲を超えて放電され、電圧が極端に低下する状態です。鉛蓄電池は、完全に放電されると極板に硬い硫酸鉛の結晶(サルフェーション)が形成されやすくなります。このサルフェーションは充電によって元に戻りにくく、バッテリー容量の低下や内部抵抗の増加を引き起こし、回復不能な損傷を与えることがあります。バッテリーを完全に使い切るのではなく、推奨される放電深度(DoD: Depth of Discharge)を守ることが重要です。

温度管理と環境条件

鉛蓄電池の性能と寿命は、使用および保管環境の温度に大きく影響されます。

高温環境下での充電や使用は、バッテリー内部の化学反応を加速させ、グリッドの腐食を早め、電解液の蒸発を促進します。これにより、バッテリーの寿命が著しく短くなります。理想的な使用温度範囲は20℃~25℃とされており、これを超える高温環境での連続使用は避けるべきです。

一方、低温環境下では、バッテリーの内部抵抗が増加し、充電効率が低下します。特に0℃以下では充電を受け付けにくくなったり、満充電に至るまでに時間がかかったりすることがあります。低温で充電する際は、充電電圧をわずかに高めに設定する、または充電時間を長くするなどの調整が必要になる場合があります。

また、充電中に発生する水素ガス(特に液式バッテリー)は引火性があるため、十分な換気が確保された場所で充電を行うことが必須です。密閉された空間での充電は、爆発のリスクを伴うため絶対に避けてください。

鉛蓄電池の適切な処分方法

鉛蓄電池は、その特性上、一般的なゴミとして処分することはできません。環境汚染のリスクを回避し、資源の有効活用を図るためにも、法に基づいた適切な処分が義務付けられています。ここでは、鉛蓄電池の処分に関する法的な側面から、具体的なリサイクル方法、そして費用と回収価値について詳しく解説します。

法的な処分義務と規制

日本において、使用済み鉛蓄電池は「産業廃棄物」に分類され、特に有害物質を含むため「特別管理産業廃棄物」として扱われる場合があります。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づき、排出事業者には適正な処理を行う義務が課せられています。

不法投棄は厳しく罰せられる行為であり、環境汚染や健康被害を引き起こす重大なリスクを伴います。そのため、排出事業者は、廃棄物処理法の規定に従い、許可を受けた専門業者に処分を委託し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を用いて最終処分までを適切に管理する責任があります。詳しくは、環境省のウェブサイトなどで確認できます。

リサイクル業者への委託方法

鉛蓄電池の処分は、産業廃棄物処理業の許可を持つ専門のリサイクル業者に委託するのが一般的です。これらの業者は、鉛蓄電池から鉛やプラスチックなどの資源を回収し、再利用する技術と設備を持っています。

委託する際は、以下の点に注意して業者を選定しましょう。

・産業廃棄物処理業の許可証(特に特別管理産業廃棄物処理業の許可)を保有しているか。
・適切な処理方法(リサイクルプロセス)を提示できるか。
・マニフェストの発行と管理を適切に行えるか。

一般社団法人電池工業会など、業界団体も鉛蓄電池のリサイクル推進に努めており、関連情報や協力体制について提供しています。信頼できる業者を通じて、環境負荷の少ないリサイクルを心がけましょう。

処分費用と回収価値

鉛蓄電池の処分には、一般的に費用が発生します。これは、収集運搬費用やリサイクル処理費用が含まれるためです。しかし、鉛は有価金属であるため、鉛の市場価格によっては、処分費用が相殺されたり、場合によっては回収価値として売却益が生じる可能性もあります。

処分費用は、電池の種類、量、業者、そしてその時の鉛の国際市場価格によって変動します。複数のリサイクル業者から見積もりを取り、費用と回収価値のバランスを比較検討することをお勧めします。有価物としての鉛の価値を理解し、適切な業者と交渉することで、より経済的かつ環境に配慮した処分が可能になります。

まとめ

鉛蓄電池は、信頼性とコスト効率の高さから多くの分野で不可欠な存在です。本記事では、その基本原理から、長寿命化のための適切な充電・管理方法、そして環境に配慮した処分方法までを解説しました。これらの知識は、安全で持続可能な運用に不可欠です。

特に製造業の現場では、フォークリフトやAGVなどに搭載された鉛蓄電池の充電管理は、生産性や安全性に直結する重要な課題です。手作業での充電やケーブルの管理には、手間や人件費、そして断線や感電といったリスクが伴います。

こうした課題を解決する次世代のソリューションとして、ワイヤレス給電システムが注目されています。

ナブテスコ株式会社が提供する「Nabtesco WiBoticワイヤレス給電・充電システム」は、鉛蓄電池の充電プロセスに革新をもたらします。ケーブル接続が不要なため、充電時の手間や安全リスクを排除し、充電作業の完全自動化を実現。これにより、バッテリーの過放電を防ぎ、寿命を延長する効果も期待できます。

ナブテスコのワイヤレス給電は、高い電力伝送効率と堅牢性を誇り、製造現場の過酷な環境下でも安定して稼働します。鉛蓄電池を搭載した機器のバッテリー管理を自動化することで、人手不足の解消や生産ラインの効率化に大きく貢献します。鉛蓄電池の利用に新たな価値を創造するナブテスコのソリューションをぜひご検討ください。

ナブテスコのワイヤレス給電についてはこちら
https://wireless-power.nabtesco.com/

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