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ワイヤレス給電の周波数帯とは?高周波・6.78MHzなど違いを解説

ワイヤレス給電の周波数帯とは?高周波・6.78MHzなど違いを解説

今日の製造業では、生産性向上やコスト削減、安全性の確保が課題となっています。
そうした中で、工場内のケーブルレス化を可能にする「ワイヤレス給電」は、これらの課題を解決する革新的な技術として注目を集めています。しかし、「ワイヤレス給電」と一口に言っても、その種類や使用される周波数帯は多岐にわたり、特に難しい専門用語の理解が、導入検討のハードルとなっている現状もあるのではないでしょうか。

この記事では、ワイヤレス給電の主要な周波数帯について分かりやすく解説するとともに、導入における検討ポイントもご紹介していきます。

1. なぜ周波数帯が重要なのか?

ワイヤレス給電の技術は、私たちの生活の様々な場面で活用されています。

スマートフォンや電動歯ブラシの充電、電気自動車の非接触充電、さらには工場内の自動搬送機(AGV/AMR)への給電など、その用途は広がりを見せています。

ワイヤレス給電の仕組み

ワイヤレス給電の基本的な仕組みは、電磁波を利用して電力を送ることです。これは、発電所から家庭へ電線を通じて電力が送られるのに対し、空間を介して電力を伝送します。 ワイヤレス給電の仕組みについて知りたい方は以下の記事もご覧ください。

▼ワイヤレス給電の原理と仕組みを解説!導入前に知っておくべき基礎知識
https://wireless-power.nabtesco.com/media/column/wireless-power-mechanism

ワイヤレス給電における周波数の役割

電力を無線で送る際、電磁波の周波数は、伝送効率、伝送距離、送れる電力の大きさ、そして安全性に大きく影響します。周波数が異なれば、それぞれの特性が変化するため、用途に応じて最適な周波数帯を選ぶ必要があります。

2. ワイヤレス給電の基本原理と主要方式

ワイヤレス給電には、主に「電磁誘導方式」と「電界結合方式」の2つの主要な原理があります。これらの方式は、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて使い分けられています。

電磁誘導方式の仕組みと特徴

電磁誘導方式は、電気のコイルの間に生まれる磁石の力を使い、電気を送る方法です。 電気を送る側のコイルに交流の電気を流すと、磁石の力が生まれ、この磁石の力が電気を受け取る側のコイルに伝わると、受け取る側のコイルに電気が発生し、電力が送られます。

この方式は比較的簡単な仕組みで、昔から使われている技術であり、主に短い距離で電気を送るのに向いています。そのため、スマートフォンの充電器や電動歯ブラシなどで広く使われている一方で、電気を送るコイルと受け取るコイルの間に金属などの磁石にくっつく物があると、効率が悪くなったり、熱が出たりする場合があります。

電界結合方式の仕組みと特徴

電界結合方式は、電極と電極の間に発生する電気の力場(電界)を利用して電気を送る方法です。電気を送る側の電極に交流の電圧をかけると電界が生まれます。この電界が電気を受け取る側の電極に電圧を発生させることで電力が伝わります。この方式は、磁性体や金属の影響を受けにくい特性があります。

また、電極の間に誘電体(電気を通さない物質)があっても電気を送れるため、水や油、塵などがある環境でも比較的安定して給電が可能です。主に中〜長距離での電力伝送や、金属異物の多い環境での使用に適している場合が多く、工場内のAGV(無人搬送車)への給電などに採用されるケースが増加しています。

3. ワイヤレス給電における「周波数」の役割

ワイヤレス給電において、電力を伝送する電磁波の周波数は、その性能を決定づける極めて重要な要素です。周波数帯の選択は、伝送効率、伝送距離、送れる電力の大きさ、そしてシステムの安定性や安全性に直結します。

周波数帯が伝送効率、距離、電力に与える影響

一般的に、周波数が高くなるほど、より多くの情報を一度に送ることが可能となります。電力伝送においても、周波数は以下のような影響を与える場合があります。

特定の条件下では、周波数を高めることで伝送効率が向上する場合があります。しかし、高すぎると空気中の減衰が大きくなるなど、効率が低下する要因も出てくるため注意が必要です。また、周波数が低いほど電波が遠くまで届きやすい特性がある一方、高い周波数は指向性が高まるため、送電側と受電側の位置関係が厳しくなることがあります。

送りたい電力の大きさによっても最適な周波数帯は異なります。大量の電力を送るには、より低い周波数帯が適している場合もあれば、特定の高周波帯が採用される場合もあります。

高周波・低周波の基準とは?

「高周波」「低周波」という言葉は、相対的なものであり、明確な境界があるわけではありません。ワイヤレス給電の分野では、一般的に以下のように分類されることが多いです。

低周波 数Hzから数百kHz程度の周波数帯を指す
高周波 数MHzから数GHz程度の周波数帯を指す。特に、6.78MHzや13.56MHzといった特定の周波数帯は、ISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドとして国際的に割り当てられており、免許不要で利用できるため、ワイヤレス給電において広く採用されている

 

これらの周波数帯の違いは、ワイヤレス給電の種類や用途を決定づける重要な要素となっています。

3. ワイヤレス給電における「周波数」の役割

ワイヤレス給電には、様々な周波数帯が利用されており、それぞれが異なる特性と最適な用途を持っています。ここでは、主要な周波数帯について具体的に解説します。

低周波帯(Hz~数100kHz)の特性と主な用途

低周波帯は、電波の直進性が低いため障害物の影響を受けにくい特性があります。比較的シンプルな回路で構成できる場合が多く、伝送効率は送電コイルと受電コイル間の距離に大きく影響されます。

主な用途としては、電動歯ブラシや一部のスマートフォン充電器など、ごく近距離で小電力を伝送するのに利用されています 。また、医療機器の埋め込み型給電など、人体への影響が懸念される場合でも、慎重な設計と評価のもとで採用されることがあります。

高周波帯(6.78MHz、13.56MHz)の特性と主な用途

高周波帯は、ワイヤレス給電の分野で最も広く利用されている周波数帯の一つであり、特に6.78MHzと13.56MHzは、国際的なISMバンドとして定められ、産業、科学、医療分野での利用が国際的に認められています。

この周波数帯は、電磁誘導方式や電界結合方式での電力伝送に適した特性を持ち、比較的高い伝送効率を実現しやすいです。また、ある程度の距離でも安定した電力伝送が可能である場合もありますが、電波法令により他の無線通信との干渉を避けるための出力制限などが設けられています。

主な用途として、6.78MHzは国際的に標準化された周波数帯であり、特に中・大電力のワイヤレス給電に適しているとされています。製造業における自動搬送車(AGV/AMR)への給電、産業用ロボット、スマートファクトリーの各種設備など、幅広い用途での活用が期待されており、実際に導入されている事例も増加傾向です。

一方、13.56MHzはNFC(Near Field Communication)の通信周波数としても広く利用されており、ICカードリーダーや一部のスマートフォン充電、小電力の産業機器などで活用されています。ナブテスコのワイヤレス給電技術は、特に製造業の現場で求められる堅牢性、安全性、効率性を追求し、高周波帯での安定した電力伝送を可能にしています。

マイクロ波帯(5.7GHz、24GHz)の特性と主な用途

マイクロ波帯は、Wi-Fiなどに代表される無線通信で広く利用されている周波数帯であり、ワイヤレス給電においても長距離伝送の可能性を秘めているため、研究開発が進められている帯域です。

この帯域の電波は直進性が非常に高く、特定の方向へ集中的に電力を送る「ビームフォーミング」が可能です。そのため、伝送距離を長く設定できる可能性がありますが、送電側と受電側の厳密な位置合わせが非常に重要となります。

また、周波数が高くなるほど空気中の水蒸気や雨などによる減衰の影響を受けやすくなる特性も持ち合わせています。主な用途としては、ドローンへの空中給電や宇宙太陽光発電など、比較的長距離での電力伝送や広範囲への給電が期待される分野で研究開発が進められている状況です。

人体への影響については、出力レベルや曝露時間による安全基準が設けられており、実用化には厳格な規制と安全性の確保が求められます。

5. 【用途別】最適な周波数帯の選び方とは?

ワイヤレス給電の導入を検討する上で、自身の用途に最適な周波数帯を選ぶことは非常に重要です。周波数帯の選択は、システム全体の性能、コスト、安全性、そして将来の拡張性に大きく影響を与えるため、慎重な検討が求められます。

小電力機器(スマートフォンなど)向け

スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの小電力機器の充電には、主に電磁誘導方式が採用され、低周波帯から高周波帯(例えば13.56MHz)が利用されることが一般的です。短距離で安定した充電が可能で、コストも比較的抑えられる特性があります。

大電力機器(EV充電など)向け

電気自動車(EV)の充電のように大電力を伝送する場合には、効率的な電力伝送が可能な周波数帯の選定が重要です。現在、EVのワイヤレス充電では、高周波帯(例えば85kHzや6.78MHz)が国際的な標準化の検討対象となっている状況です。大電力の伝送では、発熱や電磁ノイズへの対策も重要となります。

特定産業用途(製造業など)向け

製造業における工場内の自動化設備やロボット、AGV/AMRなどへの給電には、安定した電力供給と、異物混入や粉塵などの環境に強い堅牢性が求められます。この分野では、磁性体などの影響を受けにくい電界結合方式や、比較的安定した伝送が可能な高周波帯(特に6.78MHz)が注目されています。

6. まとめ

ワイヤレス給電は、その利便性と多様な応用可能性から、私たちの生活や産業に革新をもたらす技術として期待されています。その中心にあるのが周波数帯の選択であり、低周波から高周波、マイクロ波まで、それぞれの特性を理解することが、最適なワイヤレス給電システムを選ぶ上で不可欠です。

特に製造業においては、生産性向上、安全性確保、そしてスマートファクトリー化の推進に向け、高周波である6.78MHz帯のワイヤレス給電が重要な役割を担うと考えられます。ナブテスコは、この分野で長年の経験と確かな技術力を持っており、お客様の課題解決に貢献できるワイヤレス給電ソリューションを提供しています。

ワイヤレス給電の導入にご興味がございましたら、ぜひナブテスコまでお気軽にお問い合わせください。お客様のビジネスに最適なソリューションをご提案いたします。

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