
スマートフォンや電気自動車(EV)の充電、工場での自動搬送車(AGV)やロボットへの給電、さらには医療現場まで、ワイヤレス給電の活用は私たちの想像以上に広がりを見せています。
この記事では、ワイヤレス給電の具体的な活用例をご紹介します。ワイヤレス給電は私たちの生活の中に、どのように活用されているのでしょうか。
ワイヤレス給電の基礎知識
ワイヤレス給電とは、ケーブルを使わずに離れた場所へ電力を供給する技術です。非接触で電力を送るため、電源コードの抜き差しが不要になり、利便性や安全性の向上が期待されています。スマートフォンや電気自動車、工場内の機器など、さまざまな分野での活用が注目されています。
ワイヤレス給電についての詳細はこちらの記事もご覧ください。
身近な場所で進むワイヤレス給電の活用例
ワイヤレス給電技術は、私たちの日常生活において徐々にその姿を現し始めています。特に身近な電子機器や次世代モビリティ、そしてIoTデバイスなど、様々な分野での応用が進み、その利便性が注目されています。
スマートフォンやウェアラブルデバイスへの非接触充電
最も身近なワイヤレス給電の例として挙げられるのが、スマートフォンやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスへの非接触充電です。現在、多くのスマートフォンが国際標準規格である「Qi(チー)」に対応しており、充電パッドに置くだけで手軽に充電が可能です。
これにより、ケーブルを抜き差しする手間が省け、デスクやベッドサイド、カフェや公共施設など、様々な場所でスマートな充電環境が提供されています。Apple WatchやGalaxy Watchといったスマートウォッチも、専用の充電器に置くだけで充電できるものが一般的です。
電気自動車EVへのワイヤレス給電
電気自動車(EV)へのワイヤレス給電も、実用化に向けた研究開発が進んでいます。駐車場に設置された給電パッドの上にEVを停車させるだけで充電が開始されるため、充電ケーブルを接続する手間が不要になります。
loTデバイスやセンサーへの応用
IoT(Internet of Things)デバイスや各種センサーへのワイヤレス給電の応用も注目されています。これらのデバイスは、一度設置されると長期間にわたって稼働することが多いため、電池交換の手間やコストが課題となることがあります。
ワイヤレス給電を活用することで、電源ケーブルの配線が不要になるだけでなく、定期的な電池交換の必要もなくなり、メンテナンスフリーでの運用が可能になります。これにより、スマートホーム、スマートオフィス、工場内の監視センサー、農業分野での環境センサーなど、多岐にわたるIoTシステムにおいて、より柔軟な設置と持続的な稼働が実現します。
製造業・物流業におけるワイヤレス給電の活用例
自動搬送車(AGV)
工場や倉庫内で製品や部品を自動で運搬する自動搬送車(AGV)は、その稼働に安定した電力供給が不可欠です。従来の接触充電方式では、充電のためにAGVが特定の充電ステーションに停止する必要があり、その間の稼働停止時間が課題でした。ワイヤレス給電を導入することで、AGVが走行中や荷物の積み下ろし中に非接触で充電が可能となり、充電のための停止時間を大幅に削減できます。
これにより、AGVの稼働率が向上し、24時間体制での連続稼働も実現しやすくなります。また、充電端子の摩耗や接触不良といったトラブルも減少し、メンテナンスコストの削減や安全性の向上にも貢献します。
ロボットアーム
製造現場で幅広く活用される産業用ロボットアームは、精密な動作のために安定した電力供給が求められます。従来のケーブル給電では、ロボットアームの複雑な動きによってケーブルが絡まったり、断線したりするリスクがありました。ケーブルの存在は可動域を制限し、メンテナンスの頻度を高める要因にもなります。
ワイヤレス給電を導入することで、ケーブルが不要になり、ロボットアームの可動域が拡大し、より自由で柔軟な動作が可能になります。ケーブルによる断線リスクがなくなることで、ダウンタイムの削減やメンテナンス頻度の低減にも寄与し、生産ライン全体の安定稼働に貢献します。
ドローン
物流、インフラ点検、測量、農業など、多岐にわたる分野で活用が進む産業用ドローンにとって、飛行時間の延長は重要な課題です。現在のドローンはバッテリー容量に限界があり、長時間の運用には頻繁なバッテリー交換や充電が必要となります。
ワイヤレス給電技術を応用することで、ドローンが特定の充電パッド上を通過する際や、定点でのホバリング中に自動で充電を行うことが可能になります。これにより、ドローンの連続稼働時間が大幅に延長され、広範囲の監視や点検、長距離輸送など、より高度なミッションの実現に貢献します。
ワイヤレス給電の将来性
医療現場での活用の期待
医療分野におけるワイヤレス給電の導入は、患者の負担軽減と医療の質の向上に大きく貢献すると期待されています。特に、体内埋め込み型医療機器への応用は、電池交換のための再手術の必要性をなくし、感染リスクの低減や患者のQOL(生活の質)向上に直結します。例えば、ペースメーカーや神経刺激装置、埋め込み型センサーなどへの非接触給電により、より安全で長期的な使用が可能になります。
また、病院内の医療機器や設備においても、ワイヤレス給電の導入が進むことで、煩雑な配線が不要となり、衛生管理の向上や移動の容易さが実現します。手術室での医療機器や、病室でのモニタリングデバイスへの給電が無線化されれば、作業効率が向上し、患者の安全確保にも繋がるでしょう。将来的には、カプセル内視鏡のような診断機器や、遠隔医療を支えるデバイスへの応用も進み、医療現場に革新をもたらすと考えられています。
市場拡大に向けた展望
ワイヤレス給電の市場は、今後も急速な拡大が見込まれています。技術の成熟とともに、現在活用が進むスマートフォンやウェアラブルデバイスの充電から、より大規模な電力供給へと応用範囲が広がっていくでしょう。例えば、スマートシティ構想においては、街路灯や監視カメラ、公共交通機関のセンサーなど、都市インフラのあらゆるデバイスへの安定した電力供給源としてワイヤレス給電が組み込まれる可能性があります。
家庭内においても、家具や家電製品にワイヤレス給電機能が標準搭載されることで、コードレス化がさらに進み、より自由な空間デザインと利便性が実現します。キッチン家電、リビングの照明、スマートホームデバイスなど、私たちの身の回りの多くのものが、意識することなく常に充電される環境が当たり前になるかもしれません。
まとめ
ワイヤレス給電は、スマートフォンや電気自動車(EV)、IoTデバイスといった身近な製品から、製造業の自動搬送車(AGV)やロボット、物流のドローンに至るまで、幅広い分野で活用が進んでいます。
このようなワイヤレス給電の進化は、AGVやAMR、サービスロボット、ドローンなどの自律型機器のさらなる普及を後押ししています。これらの機器が最大限のパフォーマンスを発揮するためには、安定した電力供給と効率的な充電システムが不可欠です。
ナブテスコが提供する「WiBotic ワイヤレス給電・充電システム」は、まさにこのニーズに応えるソリューションです。同システムは、充電可能距離が長く、位置ずれ許容範囲が広いため、稼働中のロボットやドローンが充電ステーションに正確に停止する必要がなく、スムーズな自動充電を実現します。また、コンパクトで軽量な設計は、限られたスペースにも導入しやすく、防塵・防水性にも優れているため、屋内だけでなく屋外での過酷な環境下でも安定して利用できます。
