
製造業の現場でドローンを活用する企業が急増しています。設備点検、在庫管理、工場内の監視など、その用途は多岐にわたります。しかし、ドローンの運用で最も課題となるのが「バッテリー問題」です。飛行時間の短さ、頻繁な充電作業、バッテリーの劣化による交換コスト――これらの課題は、ドローンの業務活用における生産性を大きく左右します。
本記事では、ドローンバッテリーの基礎知識から、失敗しない選び方まで解説します。
関連記事:ドローンのワイヤレス給電とは?運用を支える充電技術の最前線を解説
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ドローンバッテリーの基礎知識
ドローンを安全かつ効率的に運用するためには、バッテリーに関する基礎知識が不可欠です。ここでは、ドローンに使われる主なバッテリーの種類と、バッテリー容量が飛行時間にどう影響するかを解説します。
ドローンに使われるバッテリーの種類
ドローンには主にリチウム系のバッテリーが使用されており、それぞれ異なる特性を持っています。用途や求める性能に応じて適切なバッテリーを選ぶことが重要です。
リチウムポリマー(LiPo)バッテリー
リチウムポリマー(LiPo)バッテリーは、高いエネルギー密度と優れた出力特性から、多くのドローンで標準的に採用されている高性能バッテリーです。
軽量でありながら大容量を実現しやすく、ドローンの機動性や飛行時間を向上させます。また、形状の自由度が高いため、ドローンの限られたスペースにも搭載しやすいというメリットがあります。しかし、過充電や過放電に弱く、物理的な衝撃にもデリケートなため、適切な管理と取り扱いが非常に重要です。
リチウムイオン(Li-ion)バッテリー
リチウムイオン(Li-ion)バッテリーは、LiPoバッテリーに比べて安定性が高く、長寿命である点が特徴で、一部のドローンやモバイル機器、EVなどに広く利用されています。
LiPoバッテリーと比較して自己放電が少なく、繰り返し充電に強い傾向があります。ただし、LiPoバッテリーに比べて瞬間的な出力(放電レート)が低い場合が多く、重量もかさむ傾向があるため、高性能な空撮ドローンなどではLiPoが選ばれることが多いです。しかし、産業用ドローンで長時間の安定飛行が求められる場合など、特定の用途ではLi-ionが適していることもあります。
その他のバッテリータイプ
ドローンバッテリーの主流はLiPoとLi-ionですが、特殊な用途や研究開発段階では、異なる特性を持つバッテリーも検討されています。
過去にはニッケル水素バッテリー(NiMH)などが小型のRCモデルで利用されたこともありますが、現在ではエネルギー密度や出力の面でリチウム系バッテリーが圧倒的に優位です。将来的には、より安全で高効率な固体電池などの次世代バッテリーがドローンに搭載される可能性も期待されています。
バッテリー容量と飛行時間の関係
ドローンのバッテリー容量(mAhなど)は飛行時間に影響し、容量が大きいほど長く飛べる傾向があります。
しかし、容量が増加するとバッテリー自体が重くなり、その重量を支えるためにモーターの消費電力も増えるため、飛行時間は必ずしも容量に比例して延びるわけではありません。
実際の飛行時間は、モーター効率や機体重量、風などの飛行環境も大きく影響します。
失敗しないドローンバッテリーの選び方
ドローンバッテリーを選ぶ際には、用途、機体との互換性、運用効率、安全性、そしてコストパフォーマンスの5つのポイントを総合的に考慮することが重要です。
選定ポイント①:用途に合った容量を選ぶ
ドローンバッテリー選びの第一歩は、空撮・測量なら大容量、レースなら瞬発力重視の中容量・高Cレートなど、用途と必要な飛行時間に合わせて適切な容量(mAh)を選ぶことです。
ただし、バッテリー容量が大きくなると、その分重量も増加します。それにより機動性が低下したり、積載量(ペイロード)が減ったりするため、飛行時間と機体重量のバランスを考慮することが重要です。
選定ポイント②:ドローン機体との互換性を確認
ドローンバッテリーは、電圧、容量、コネクタ形状、サイズなどが機体と適合するかという互換性の確認が不可欠です。
仕様が合わないと、故障や発火事故の原因となり得ます。高価でも安全性が保証された純正バッテリーに対し、安価な互換バッテリーも存在しますが、後者を選ぶ際はPSEマークの有無やメーカーの信頼性を必ず確認しましょう。
選定ポイント③:充電時間と運用効率を考慮
ドローンのスムーズな運用には、バッテリーの充電時間が作業効率に与える影響を考慮することが不可欠です。特に現場で連続運用する場合は、急速充電への対応や、複数バッテリーを同時に充電できる充電器の利用が求められます。
充電時間が長いと待機時間が増え効率が低下するため、ポータブル電源による現場での充電環境を整えることも有効な手段です。
選定ポイント④:安全性と品質保証を重視
ドローンバッテリーは、不適切な使用や品質の低い製品の場合、発火や爆発などの重大な事故につながるリスクがあるため、安全性と信頼性の高い製品を選ぶことが最も重要です。
購入時には、以下の点に注目して選びましょう。
PSEマークの有無
日本国内で販売されるリチウムイオンバッテリーには、電気用品安全法に基づきPSEマークの表示が義務付けられています。このマークがある製品は、国の定める安全基準を満たしている証拠です。
信頼できるメーカー
実績があり、アフターサポートがしっかりしているメーカーの製品を選びましょう。
保護機能
過充電保護、過放電保護、過電流保護、短絡保護などの安全機能が内蔵されているかを確認しましょう。これらの機能は、バッテリーの異常な状態を検知し、事故を未然に防ぐ役割を果たします。
保証期間とサポート体制
万が一のトラブル時に対応してもらえるよう、適切な保証期間が設けられており、問い合わせ窓口が明確な製品を選ぶことが大切です。
選定ポイント⑤:コストパフォーマンスとランニングコスト
ドローンバッテリーは、本体価格という初期費用だけでなく、長期的なコストパフォーマンス(ランニングコスト)で評価することが賢明です。
安価なバッテリーは寿命が短く交換頻度が増え、結果的にコストがかさむ場合があります。
初期費用が高くても、長寿命で安定した高性能バッテリーの方が、トータルのランニングコストを抑えられる可能性を考慮しましょう。
ドローンバッテリーの寿命を延ばす方法
ドローンバッテリーの寿命を延ばすことは、長期的な運用コストの削減と安全な飛行に直結します。適切な充電・保管方法と使用時の注意点を守ることで、バッテリーの劣化を抑え、本来の性能を長く維持することが可能です。
正しい充電方法と保管方法
ドローンバッテリー、特にリチウムポリマー(LiPo)バッテリーやリチウムイオン(Li-ion)バッテリーは、その特性上、充電方法と保管方法が寿命に大きく影響します。適切な管理を心がけましょう。
過充電・過放電を避ける
バッテリーの寿命を縮める最大の要因の一つが、過充電と過放電です。バッテリーは常に最適な電圧範囲で使用・保管されることで、セルへの負担が軽減されます。
過充電の回避
満充電状態での放置はバッテリーの劣化を早めます。充電が完了したら速やかに充電器から外し、使用しない場合はストレージモード(保管充電)に移行させましょう。
過放電の回避
バッテリーを完全に使い切る(電圧が極端に低くなるまで放電する)と、バッテリーセルに回復不能なダメージを与え、最悪の場合、再充電できなくなる可能性があります。ドローンのバッテリー残量警告が出たら、すぐに飛行を中止して着陸させましょう。
適切な保管温度と湿度
バッテリーは極端な温度や湿度に弱く、これらが寿命に悪影響を及ぼします。理想的な環境で保管することが重要です。
保管温度
バッテリーの理想的な保管温度は、一般的に15℃~25℃程度とされています。高温環境下では内部抵抗が増加し、自己放電が促進され、劣化が早まります。逆に低温すぎると内部抵抗が増え、性能が低下することがあります。夏場の車内や直射日光の当たる場所での保管は絶対に避けましょう。
保管湿度
高湿度はバッテリーの端子部分の腐食を招く可能性があり、低湿度は静電気の発生リスクを高めることがあります。乾燥剤を使用するなどして、適切な湿度(一般的に40%~60%)を保つことが望ましいです。
長期保管時のストレージモード活用
ドローンバッテリーを長期間使用しない場合は、ストレージモード(保管充電)で保管することがバッテリー寿命を延ばす上で非常に重要です。ストレージモードとは、バッテリーを最適な電圧(LiPoバッテリーの場合、一般的に1セルあたり3.8V〜3.85V程度)に調整して保管する機能です。
ストレージモードのメリット
満充電状態や完全に放電した状態で長期間保管するよりも、バッテリーセルへのストレスが少なく、劣化を最小限に抑えられます。
活用方法
専用の充電器にはストレージモード機能が搭載されているものが多くあります。長期保管前にはこの機能を使ってバッテリーを調整しましょう。
使用時の注意点
ドローン飛行中の使い方にも、バッテリーの寿命を左右する重要なポイントがあります。バッテリーに過度な負担をかけない飛行を心がけましょう。
急激な負荷をかけない飛行方法
急加速や急減速、高速飛行など、ドローンに高い出力を要求する飛行は、バッテリーに大きな負荷をかけます。これによりバッテリー内部の温度が上昇し、劣化が早まる原因となります。
穏やかな飛行
バッテリーの寿命を延ばすためには、できるだけ穏やかな飛行を心がけましょう。急激な操作を避け、スムーズな動きで飛行させることで、バッテリーへの負担を軽減できます。
バッテリー温度の管理
飛行中や飛行後のバッテリーが異常に熱くなっていないか確認しましょう。熱くなりすぎている場合は、冷却時間を十分に取るか、飛行方法を見直す必要があります。
高温・低温環境での使用を避ける
バッテリーは、その性能を最大限に発揮できる温度範囲が決まっています。極端な高温や低温環境での使用は、バッテリーの性能低下だけでなく、寿命にも悪影響を与えます。
高温環境での使用
炎天下での飛行や、高温になったバッテリーでの連続飛行は、バッテリー内部の劣化を加速させます。バッテリーが熱を持ちすぎると、出力が低下したり、最悪の場合、膨張や発火のリスクも高まります。
低温環境での使用
冬場などの低温環境では、バッテリーの内部抵抗が増加し、電圧降下が大きくなります。これにより、飛行時間が短縮されたり、ドローンの安定性が損なわれたりする可能性があります。低温下で飛行させる場合は、バッテリーを事前に温めるなどの対策が必要です。
ドローンバッテリーの課題を解決する次世代給電技術
ドローンバッテリーは、高温または低温の環境下で使用すると、性能の低下や寿命の短縮、さらには安全性に関わるリスクを引き起こす可能性があります。特にリチウムポリマー(LiPo)バッテリーやリチウムイオン(Li-ion)バッテリーは、温度変化に敏感であり、適切な温度管理が不可欠です。
バッテリー交換不要の「ワイヤレス給電」とは
ワイヤレス給電とは、ケーブルを使わずに電力を供給する技術の総称です。ドローン分野においては、バッテリー交換や有線での充電作業を不要にし、自動で充電を行うことで、運用効率を飛躍的に向上させるソリューションとして注目されています。
ワイヤレス給電がもたらす3つのメリット
ドローン運用にワイヤレス給電を導入することで、従来のバッテリー運用が抱えていた課題を解決し、以下のような複数のメリットを享受できます。
①運用効率の劇的な向上
ワイヤレス給電は、ドローンが指定の充電ステーションに着陸するだけで自動的に充電を開始するため、バッテリー交換の手間や充電ケーブルの接続作業が不要になります。これにより、ドローンの連続運用が可能となり、監視や点検、物流といった用途でのミッション遂行能力が大幅に向上します。
②人的コストの大幅削減
従来のドローン運用では、バッテリーの充電や交換に多くの人手と時間が必要でした。ワイヤレス給電システムを導入することで、これらの作業を自動化できるため、バッテリー管理にかかる人的コストを大幅に削減できます。これにより、オペレーターはより高度な業務に集中できるようになります。
③24時間稼働による生産性向上
ワイヤレス給電により、ドローンは必要な時に自動で充電を行い、ミッションを継続できます。これにより、夜間や悪天候時、または人手による介入が困難な場所でも、ドローンを24時間体制で稼働させることが可能になります。結果として、データ収集の頻度や範囲が拡大し、生産性の劇的な向上が期待できます。
ナブテスコのワイヤレス給電ソリューション
ナブテスコ株式会社は、産業用ロボット分野で培った精密制御技術と独自のワイヤレス給電技術を組み合わせ、ドローン向けに特化したワイヤレス給電ソリューションを提供しています。これにより、屋外での過酷な環境下でも安定した電力供給と自動充電を実現し、ドローンの自律的な長期運用をサポートしています。
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ドローンバッテリー選びでよくある質問
Q. バッテリーの交換時期はどう判断すればいい?
ドローンバッテリーの交換時期は、パフォーマンスの低下や物理的な異常で判断します。新品時と比べ、飛行時間が明らかに短くなったり、満充電までの時間が長くなったりした場合がサインです。特に、バッテリーの膨張や変形は発火の危険があるため直ちに使用を中止してください。飛行中の電圧不安定や外装の損傷が見られた場合も、安全運用のため早めの交換を検討しましょう。
Q. 純正品と互換品、どちらを選ぶべき?
ドローンバッテリーは、機体との互換性や安全性が保証されている純正品を選ぶことを強く推奨します。互換品は安価な点が魅力ですが、品質が不安定な場合や、故障・事故につながるリスクがあるため注意が必要です。もし互換品を選ぶ場合は、メーカーの信頼性やレビューをよく確認し、PSEマークなどの安全認証の有無を必ず確認しましょう。
Q. 複数のバッテリーを効率的に管理する方法は?
複数のドローンバッテリーを効率的に管理するには、個々の状態把握が重要です。各バッテリーにラベリングをして使用回数を均等化し、充電サイクルを記録して劣化状態を把握しましょう。また、長期保管時は適切な電圧で保つストレージモードを活用し、マルチ充電器で充電時間を短縮することで、バッテリーの寿命を延ばし運用効率を高められます。
Q. バッテリーの廃棄方法は?
ドローンのリチウム系バッテリーは発火リスクがあるため、不燃ごみとして一般廃棄することはできません。廃棄する際は、ショートによる発火を防ぐため、必ず端子部分をビニールテープなどで絶縁処理してください。その後は、購入店やメーカー、家電量販店などのリサイクル協力店に回収を依頼するか、お住まいの自治体の指示に従って適切に処分する必要があります。
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まとめ
ドローンの性能を最大限に引き出すには、用途や機体との互換性を考慮したバッテリー選びが不可欠です。購入後も、過充電や過放電を避けるといった適切な管理が、バッテリーの寿命を延ばす鍵となります。
ドローンの運用効率を高めるソリューションとして、バッテリー交換の手間を省く「ワイヤレス給電」の導入も、ぜひあわせてご検討ください。
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